個人事業主が払った税金はすべて経費になるわけではありません。
そうなの?なんだか分けるのめんどくさいね・・・
個人事業主の会計処理でやっかいなものの1つが税金の取り扱い。
個人事業主が払った税金はすべて経費になるわけではなく、経費になる税金・ならない税金を区別しなければなりません。
どの税金が経費になるのか、会計処理はどうするのかをお話します。
経費になる税金・ならない税金の一覧
個人事業主が払う主な税金で、経費になるもの・ならないものを一覧にしました。
経費になる税金 | 経費にならない税金 |
---|---|
個人事業税 消費税 固定資産税 償却資産税 登録免許税・不動産取得税 自動車税・自動車取得税・自動車重量税 印紙税 | 所得税 住民税 源泉所得税 罰金 延滞税・加算税 国民健康保険料・国民年金 |
どのような税金か、1つ1つ見ていきましょう。
経費になる税金
経費になる税金の会計処理は、
租税公課 ×××円 / 現金預金 ×××円
というように「租税公課」という勘定科目を使います。
個人事業税
個人事業税は、1年間の所得(収入-経費)が290万円を超える場合に都道府県が課す税金で、8月と11月に納付します。
個人事業税は全額経費になります。
消費税
原則として2年前の消費税がかかる売上(課税売上)が1,000万円を超えた場合には、消費税の納税義務が生じ、翌年3月31日までに申告・納付する必要があります。
消費税の会計処理は、
- 仕訳を税込の金額で計上する「税込経理」
- 仕訳を税抜の金額と消費税額に分けて計上する「税抜処理」
があります。
ここでは細かい処理の説明は省きますが、税込経理の場合は納付する消費税額を「租税公課」と計上して経費にすることができます。
固定資産税
固定資産税は、1月1日現在土地・建物を持っている人に課される税金です。
事業に使っている土地・建物にかかる固定資産税は、経費にすることができます。
償却資産税
償却資産税は、土地・建物以外の事業に使っている資産(パソコン・機械・備品など)に対して課される税金です。
1月1日現在で償却資産税の対象になる資産が150万円以上あれば、1月31日までに申告する必要があります。
償却資産税は全額経費になります。
登録免許税・不動産取得税
登録免許税は、土地・建物を買った・新たに建てた・相続した・贈与を受けたといった場合、登記することで課される国税です。
司法書士に登記をお願いした場合には、司法書士報酬と一緒に支払います。
不動産取得税は土地・建物を買った・新たに建てた・贈与を受けた(相続はかからない)場合、都道府県税事務所から納付書が送られてきます。
事業に使っている土地・建物にかかる登録免許税・不動産取得税は、経費にすることができます。
自動車税・自動車取得税・自動車重量税
事業で使うクルマにかかる自動車税・自動車取得税・自動車重量税は、経費にすることができます。
印紙税
領収書や契約書など、印紙税の対象となる文書には収入印紙を貼る必要があります。
印紙税は経費にすることができます。
経費にならない税金
経費にならない税金は、会計処理をする必要はありません。
ただし事業で使っている口座から払った場合には、
事業主貸 ×××円 / 預金 ×××円
というように「事業主貸」勘定を使って経費にならない税金を処理し、預金残高が合うように調整しましょう。
所得税
所得税は個人の所得に対して課される国税です。
個人事業主は1/1~12/31までの所得を計算し、翌年3/15までに申告・納税する必要があります。
所得税は経費にすることができません。
また所得税が還付の場合も収入にはなりません(ただし「還付加算金」がある場合には「雑所得」に計上します)。
住民税
住民税は個人の所得に対して課される地方税です。
所得税の確定申告をすると、お住まいの市区町村が住民税を計算して納付書を送ってきます。
住民税は経費にすることができません。
源泉所得税
源泉所得税は、従業員のお給料や税理士などへの報酬から天引きする所得税です。
源泉所得税は原則として天引きした月の翌月10日までに国に納める必要があります。
源泉所得税は経費にすることができません。
源泉所得税の会計処理は、事業主貸ではなく「預り金」という勘定科目を使います。
①お給料から天引きするとき
給与 ×××円 | 預り金 ×××円 |
現金預金 ×××円 |
②納付するとき
預り金 ×××円 | 現金預金 ×××円 |
罰金
交通違反などで罰金を支払った場合、罰金は経費にすることができません。
延滞税・加算税
期限を過ぎてから税金を納めたり、納める税金の額が少ないまたは納付していなかったりする場合には延滞税や加算税というペナルティが課されます。
このペナルティは経費にすることができません。
国民健康保険料・国民年金
国民健康保険料や国民年金は経費にすることができません。
ただし、確定申告の際「社会保険料控除」として全額控除することができます。
1つの税金に経費になる部分とならない部分が混ざっている場合
例えば、
- 3階建てアパートの固定資産税30万円
- 1,2階は賃貸し、3階に自分が住んでいる(各階の面積は同じ)
この場合、1,2階分の固定資産税は事業に使っている分として経費になりますが、自分が住んでいる3階分は経費になりません。
会計処理は、
租税公課 20万円 | 現金預金 30万円 |
事業主貸 10万円 |
というように、経費部分とプライベート部分を按分して処理します。
仕事兼プライベート用のクルマにかかる自動車税などもこのように分けて処理します。
まとめ
個人事業主が払う税金は、経費になるものとならないものがあります。
よく所得税や住民税などを「租税公課」として経費にしているのを見かけますが、税務調査が来たら必ず指摘されるので気を付けましょう。
税金の支払いがあれば、その都度経費になるかならないかを調べましょう。めんどうでも確実です。